平成19年7月16日に発生した中越沖地震により、不同沈下を起こした柏崎市内の住宅。木造二階建、建築面積65坪ほど。リフォーム工事中に被災。予算の関係上、沈下修正はリフォーム中の部屋を中心に行い、二階との通柱基礎に沈下防止目的のヘリカルピアを施工。
SS試験の結果、2~5m付近までに自沈層を確認。周囲の状況から、液状化現象が発生、さらに砂丘上部からの側方流動による突上げ現象が起こったものと推定される。 7.5m付近のN値は7~8程度。
ヘリカルピア専用支持力計算ソフトにより、SS5シャフト、10"-12"ヘリックスサイズのヘリカルピアを7.5mの深度で17箇所施工する。設計上のヘリカルピア1本当りの極限支持力は36.2~51.3kN、施工トルクは1023~1357N-m。
ヘリカルピア設置箇所のフーチングのチッピングを行う。ブラケットが基礎に密着するように切断部分を出来る限り凹凸がないようにする。この作業が十分でないと、ジャッキアップの際、ブラケットの座屈現象が起こる場合がある。
ヘリカルピアの貫入作業状況。ポータブル式油圧トルクモーターを使用。3~5°の傾斜角を保ちながら一定の速度で貫入する。ヘリックスの螺旋構造によって推進力が発生するため、鉛直方向への圧力は必要ない。また、貫入による地盤の撹乱も最小限に抑えられる。
このように、ヘリカルピアの貫入は機械装置によって行われるため、建物の自重を利用する鋼管杭圧入工法と違い安全率の設定が可能である。
施工深度に到達するまで、継手シャフトを接続する。継手シャフトの接続はカップリング方式によるボルト固定である。この点も鋼管圧入工法の溶接による接続方式とは異なり、強度的に優れている。
貫入作業中は常に圧力ゲージのモニタリングを行い、設計値以上の施工トルクで施工する。
ヘリカルピアの貫入終了後、ブラケットを取付ける。この際、ブラケットが基礎に密着するようにする。
ジャッキングツールとジャッキを取付けた様子。ジャッキアップすると、ジャッキングツールが押し上げられることによりブラケットが引き上げられ、基礎が持ち上がる。ジャッキは出力30kNのものを使用。
ヘリカルピアの設置が全て完了した後、ジャッキアップによる沈下修正を行う。室外及び室内の両方からレベルの確認をする。また、油圧ゲージのモニタリングを行いながら、基礎の強度を超えないよう慎重にジャッキアップを行う。 沈下修正後、ジャッキとジャッキングツールを取り外し、埋め戻しをする。
今回の作業により、リフォーム中の部屋を中心に床の傾斜・サッシの開閉不具合が解消された。施工期間は実働9日間。